周囲に知られずに時効を援用できるか
1 借金と家族
両親と同居している方や、配偶者がいる方の場合、その両親や配偶者に秘密で借金していることは珍しくなく、債務整理のご相談でも、家族には内緒にしたいというご要望を伝えられることは少なくありません。
債務整理の場合、家族に内緒で進められるかどうかは、その家族が両親か配偶者かによって異なり、また手続きの内容によっても異なります。
例えば、貸金業者と個別に交渉して返済条件を変更する合意を行い、その合意にしたがって業者に返済する手続である任意整理の場合、自宅での書類(弁護士との委任契約書や業者との合意書等)の保管に不備があり見られてしまった等の事情がない限り、同居の両親や配偶者に知られることはまず考えられません。
ただし、任意整理の合意後の返済中に遅れが生じたりすると、業者から催促の連絡(電話連絡や郵便での催促)が来ることになりますので、これがきっかけで知られてしまう可能性はあります。
他方、自己破産や個人再生は、官報にその情報が掲載されるため官報を通して同居の両親や配偶者に知られる可能性はゼロではなく、また、裁判所や破産管財人等から配偶者についての資料(収入資料や預金通帳など)の提出を求められた場合、配偶者に事情を説明しないと資料を取得できない可能性もあります。
2 時効援用の手続き
時効援用の手続は、①債権調査を行い、②消滅時効援用通知を内容証明郵便で送付する、という流れとなります。
①債権調査とは、対象業者に弁護士から受任通知を送付し、債権についての情報、とくに債務名義(判決等)の取得など時効更新事由が存在しないかどうかを対象業者に確認します。
そして、時効更新事由が存在せず消滅時効が完成していると判断された場合に、②内容証明郵便で対象業者に時効援用通知を送付することになります。
なお、依頼者の方に既に届いている書類から消滅時効が完成していることが明らかな場合は、①を経由せずに②に進むこともあります。①には時間がかかることもありますので、①を経由しない場合は、時効援用手続きは早期に完了します。
以上のような流れとなりますので、時効援用手続きについて同居の両親や配偶者に知られることはあまり想定できず、知られるとすれば、手続きの終了後にお渡しする内容証明郵便の控えの管理が甘く、見つかってしまったというようなケースになると思います。
なお、内容証明郵便の控え等は、手続き終了後も一定期間受任弁護士(弁護士法人)にて保管することは可能ですので、書類の管理に自信のない方は弁護士にご相談ください(PDF等のデータで保管する方法もあります)。